FM三重『ウィークエンドカフェ』2020年4月25日放送

陽が沈んでしばらくすると西の空に明るい星、一番星が見えてきます。
宵の明星、金星です。
春の夜空を楽しく教えてくれるのは『星空案内人の宮本秀明さん。
志摩を中心に星空の魅力を多くの人に伝えています。

星空の案内を初めて行ったのは大学生のときでした。
見るだけでなく、星にまつわる話を伝えるとたくさんの人が喜んでくれます。
そしてその方たちと自然のすばらしさを分かち合っています。

さな頃から庭に寝転んで宇宙の不思議さを感じていた

子どもの頃から志摩市に住んでいます。
夜、星を見上げるととても綺麗で、家族とよく見ていました。
母と弟と一緒に庭に寝転んで星を見たりして、「宇宙って不思議だな」と思ったのがきっかけです。
小学校5年生のときに望遠鏡を買ってもらって、そこで観た月のクレーター、土星の輪…自分から行けないけれど、宇宙にはすごいものがあることを知り、夢が広がりました。

私は主に志摩を訪れたお客様を、望遠鏡を使ったりお話をするなどして『星空案内』をしています。
こんなに夜空に星があったのかと感動されることが多いですね。
志摩は海が近いし、季節の風や音、海辺だと波の音、秋になれば虫の声など、自然が豊かな場所です。
年間を通じて夜の自然を感じてほしいですね。
星だけでなく自然に包まれる体験をしてもらっています。

 

客様と流れ星を一緒に見る瞬間はとても嬉しい

流星群の観察会を開催することがありますが、なかなか雨のようにたくさん観られるというわけではなく、観られたらラッキーくらいですね。
みなさん同時に観られると、歓声が上がります。
みんなで自然を一緒に楽しんでいる、という感じが嬉しいです。
お誕生日の星座がどこに見えるの?と、よく聞かれます。
見つけやすい星座もあれば、なかなかすぐには見つからない星座もあります。
明るい星から辿っていく方法とか、アプリで見つけると観られますよというと喜んでもらえます。
自分で自分の星座を、ぜひ一度は発見してもらいたいなと思います。
星座が生まれたのは4000〜5000年前の紀元前ですが、その頃からみなさん空を見上げて、星の形をいろいろな物に見立てて、名前をつけたり、そこから物語が生まれました。
ギリシャ神話は小説やアニメ、そして星空観察会などでも取り上げられます。
なので星の解説をしていると、聞いたことがあると言われたりします。
例えば漫画に出てきたものが、実際に空にあることを知り、新鮮な驚きを感じてもらっています。

 

ガは25光年。時間に思いを馳せる

地球から25光年離れたところに、こと座のベガという織姫星があります。
つまり、今見ているその星の光は25年前のものなんです。
25年前、何をしていましたかと質問すると、みなさん、「はぁ…」となるんですね。
今からだと1995年頃。
それぞれ、こんなことをしていたなとか、こどもが小さかったなとか。
そのときだけみなさんの心がタイムマシンというか、昔に飛んでいるというか。
同じ場所にいながら、みなさんがそれぞれの過去に行ってくる。
同じ星空を見上げていても、思い出すこととか星に願うことがあって…同じものを見ていろいろなことを思うことができるのが、星空の良いところなんじゃないかな。

 

は誰かと一緒に観てもらいたい

ご家族とか友人とか、誰かと一緒に見てほしいと言っています。
たとえば流れ星が流れるのを観たときに、「あ、流れた!」「流れた!」と何人かで一緒に感動する。
一緒に感動を味わってもらうのが嬉しいですね。
星でなくても、虫や綺麗な花、海辺で波が流れているのを見る…何でもいいんです。
一緒に感動できるもの、そこにはそれぞれの、星なら星の一生があるんですよね。
自分にどこか重なることがあるとか、自然に対して何か、心に触れるものがあるといいなあ。
そういうものを呼び起こしてくれる、琴線に触れてくれる…自然はそういうものだと、自分は感じています。
浜辺で星空案内することがあるんですけど、望遠鏡などを使わずに、砂浜に静かに横になって、お話をしたり一緒に星を眺めたりします。
あるとき、ご年配のご夫婦がいらして、旦那さんのほうが星座に詳しくて、奥さんが「よく知っとるなあ」と。
聞くと旦那さんは昔、星が好きでよく観に行っていたそうなんです。
奥さんは初耳だったそうなんですね。
でもなんだか素敵なお話だなと思いました。
それぞれの知らなかった面を、星が呼び起こしてくれている…良い時間に居合わさせてもらったな、と逆に感謝しました。

織姫彦星が見えてくると「もう夏だな」と思い、オリオン座が見え始めると「冬が近づいているな」と。
一年に一度会える友だちのようで、とても嬉しくなります。